Microsoft Research Internship Alumni Advent Calendar 2020
*この投稿は,Microsoft Research Internship アルムナイ Advent Calendar 2020にリンク付けされたポストです.
# 概要
初めまして,シカゴ大学 コンピュータサイエンス研究科で研究員をしている西田 惇 (http://junnishida.net)といいます.私は2017年5月から2018年3月までの期間(途中学会やビザの関係で複数回一時帰国しました),Microsoft Research Asia(中国・北京市)の福本雅朗先生(現在Microsoft Applied Sciences Group)率いるHuman-Computer Interaction (HCI) Groupでインターンをしておりました.ここでは1)MSRAに行くまで,2)現地での体験,3)過去・現在・今後の研究の興味について簡単にまとめ,博士課程進学・MSRAインターンを検討されている学部生・修士生の参考になれば幸いです.
# MSRAに行くまで
当時私は筑波大学のリーディング大学院プログラム(エンパワーメント情報学プログラム)の一貫制博士課程学生で,授業の一環で海外インターンが強く推奨&支援されていたこともありD1の春頃からインターン先を探し始めました.2016年当時筑波大学の同じ研究室に研究員として所属されていた蜂須拓さん(2020年現在筑波大学 システム情報系 助教)が以前MSRAでインターンをされていたこともあって,少しお話を伺っていました.他にどういったインターン先を考えていたか忘れましたが,やはり長期インターンとなると自分の研究キャリアと関係のある方が後々メリットがあるかと思い,
MSRAは他のMSRと比べHCI系の論文はそう多くなく,また主任研究員と個人的な繋がりがあったわけではなかったので,インターンシップをするにはMicrosoft Research Asia PhD Fellowshipを取るしかないとなぜか勘違いしており,D1の頃にこちらに応募しました.締切は6月下旬で,A4 2枚ほどのResearch Statementと20分ほどの研究内容を紹介するナレーション付き動画に指導教員と研究科長のRecommendation Letterを添えて提出しました.研究の全体像や大まかな今後の方針は学振の書類作成などを通して少し言語化していたので,これをベースにコアとなる自分の学術的興味と社会的興味に触れつつ,現在の研究内容と大まかな今後の方針を中心に記述しました.その後9月に北京で15分ほどトークを行い,同月に採用通知,11月に韓国・ソウルで授賞式がありました.翌年2月ごろから福本先生とテーマについて打ち合わせを始め,5月の国際学会が終わったD2の頃から北京に滞在しました.
# MSRAに行って良かったこと
滞在を通して電子回路の設計・実装能力はかなり改善したと思います.MSRAの社屋から自転車で15分ほどの所に電子城と呼ばれる電子部品屋台街があり,大抵の電子部品はすぐに購入できました.深センの基板工場が近いため設計したPCBも格安で4日程度で届き,思いついた回路構成をその日のうちに試せる環境があったことに加え,ハードウェア設計に長けたResearcherが同じグループ内にいたため,関連する知識と経験はかなり身に付きました.
また少し視点は変わりますが,日本の研究室から一旦離れて新しい同期やアドバイザ,普段と異なる研究トレンドに囲まれて過ごすのもよい経験でした.当時博士取得後のキャリアについて少し悩んでいましたが,社内のセミナーでML系のインターン生を対象に知覚認知やHCIについてトークをする機会や,社内と自分の研究目的の差異などを感じる機会を通して,自分がどういったことに本当に興味を持っているのか再確認する時間が十分に取れました.これは後にフェローシップの申請書を作成する際に大変役に立ちましたし,引き続きアカデミックの分野で活動したいという意思を固めることができました.
またこの滞在が私にとって初めての長期海外生活でしたが,今の仕事を決めるのに重要な経験でした.出発前に生活環境の違いなどについて勿論不安はありましたが,実際住んでみると意外と普通で,海外での生活環境のセットアップなどを一通り体験し,自分にとって最低限何があれば良いのかなどの知識を得られたことで博士取得後に海外で働いても問題なさそうだなという感覚が得られたことは個人的に良かった点の1つです.
以上の点で,私はMSRAに滞在できて良かったと思います.
# 過去・現在・今後の研究
その後,2019年3月に筑波大学で博士号を取得し,同年4月から日本学術振興会 海外特別研究員制度を利用してシカゴ大学 コンピュータサイエンス研究科のHuman Computer Integration Labにて研究員として所属しています.(大まかな流れ+よく聞かれること:卒業前年の12月に大学からoffer letterを,2019年1月にDS-2019を受け取り,DS-160,支払済SEVIS I-901,面接予約書,給与所得証明書(学振が発行),パスポート,証明写真,CV/論文リストを持って2019年2月に東京米国大使館で面接(1,2分程度),同月中にビザが貼り付けられたパスポートを取得.住まいは日本にいる間にZillow.comで内覧予約し,米国に到着した始めの1週間のうちに3件ほど見回って契約を済ませました.)
中学生の頃からbio-feedbackや生体と機械の関わり方に興味を持っていた関係で,学部卒論の頃から人の物理的スキルを支援するインタフェースデバイスを中心に研究を行なっていました.その後,人の体性感覚(somatosensory)や身体知覚(body perception)を変容させるデバイスを使って人と人の間に新しいコミュニケーションチャネルを作ることに興味を持ち,筋刺激と生体電位計測を用いた筋活動共有に基づくリハビリ支援や,手指外骨格を使った小児の手指再現とヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使った小児の視点再現に基づく空間デザイン支援に関する研究を行いました.最近は,こうした新しいコミュニケーションを介して他者の体験を得たとき,「他者に対する視点を変えることはできるのか?」「他者の体験や機械による支援を自分自身の体験として解釈するにはどうすればよいか?」という問いに興味を持ち,心理学者や認知科学者と共同で心理物理実験も含めたインタラクションデザインに挑戦しています.今後も人々が主体感を持ってより自発的に活動できるための身体情報環境の構築に向けて研究を続けていきたいと考えています.
# お知らせ1
来年2月にオンラインで開催されるAugmented Humans 2021では現在Posters/Demos/Design Exhibitionの投稿を募集中です.〆切は1月22日です.ぜひ投稿をご検討下さい!
# お知らせ2
来年7月にオンラインで開催されるIEEE World Haptics Conference 2021ではStudent Innovation Contestを開催予定です.スポンサー企業からハードウェアが提供されるよう調整中です.学部生・修士生の方はぜひご応募下さい!詳細は後日HPに記載いたします.